第I相試験での統計学の役割

試験計画時の役割

第I相試験でのデザイン段階では、統計が担う部分は少ないと思います。というのも、第I相試験では、非臨床でのデータの薬物動態(PK)データ薬力学(PD)データを中心とした検討を経て、用量を決めることが試験を始める段階で一番重要なことになるからです。そのため、統計担当者ではなく、薬理担当者の出番が多くなると思います。

 

そうは言っても、症例数は統計担当者を中心として検討することが望ましいです。通常は1アームに対して、プラセボ群2例と実薬群6例のダブルブラインド試験にすることが多いです。この症例数は統計学的仮説に基づかず「薬物動態と安全性を探索的に検討するのに必要な例数」という決まり文句で決定されます。そのため、症例数も検討することは比較的少ないです。

 

症例数は必ず1アームプラセボ群2例、実薬群6例なのか?

試験を早く安価に実施するために一番手っ取り早いのが、症例数を少なくすることです。そのため、私も過去には「プラセボ群2例、実薬群6例」よりも少なく出来ないか?という相談を受けた薬剤があります。しかし、統計学的な症例数でないため、統計的な観点からアドバイスできることは限られています。ですが、第I相試験では薬物動態と安全性が検討出来ればよいため、もし薬物動態のバラツキが個体間で小さいような場合には、もう少し症例数を少なくするという選択肢も可能かもしれません。このような疑問があった場合には、統計解析担当者に相談してみることも良いと思います。

 

ブラインド項目はないか?を検討する

ブラインド項目という言葉を知っていますか?通常、1アームに対して、プラセボ群2例と実薬群6例のダブルブラインド試験にすることが多いと申し上げました。では、Key情報をブラインドにするだけ十分でしょうか?実は、もうちょっと検討しなければなりません。というのも、薬剤の作用機序上、通常の検査でKeyがばれてしまうことがあります。

 

例えば、糖尿病薬として2014年に販売された、SGLT2阻害剤という薬です。この薬剤の作用機序としては、腎臓での糖の再吸収を阻害し、尿と一緒に排出するすることで、血中の糖を下げてしまうという薬です。そのため、尿糖の検査をリアルタイムで実施すると、必ず誰が実薬群であるかが分かってしまうのです。このように、薬剤の作用機序を考えた時に、何か試験中に誰も知らないようにする検査項目がないか?ということを考える必要があります。

 

試験実施後の役割

試験実施後には、とにかく集計です。集計とは、要約統計量を算出するということです。要約統計量として何を出力するかはまた悩ましいところですが、N、平均、SD、中央値、最小値、最大値、が出ていれば第I相試験としては問題ないと思います。あらゆる検査項目に対して、このような集計を実施します。

 

また、第I相試験での症例数ぐらいであれば、データの一覧表を眺めることも重要になります。100人や1000人の試験を一覧表で確認することは難しい(というか不可能)ですが、1群6例であれば、気になるデータを一つ一つ確認することも重要です。そのために、散布図や個別推移図(スパゲティプロット)を作成して確認することも有意義だと思います。

 

CSR作成では、結果を言いすぎていないか?をチェック

臨床試験を実施後は、必ず試験報告書(CSR;Clinical Study Report)を作成しなければいけません。その際にも、集計が適切に反映されているか、また、結論が飛躍していないかなどを確認する必要があります。「1群6例の試験で決定的なことは何も言えない」というスタンスを常に持ち、確認していくことが重要になります。

 

終わりに

第I相試験で統計が出てくる場面は少ないですが、それでも試験開始時から巻き込むことが重要です。何度か申し上げている通り、何か問題が出てから統計解析担当者に相談しても、解決策は限られているからです。また、第II相試験からは統計解析担当者には積極的に参加してもらう必要があります。その際に、第I相試験のデータを統計解析担当者が知っておく必要があります。それらを総合的に勘案しても、統計解析担当者を積極的に巻き込んでいきましょう。



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