二つの不利益:患者さんの不利益と企業の不利益

判断をするからには、間違いを犯す可能性がある

臨床試験では、最終的に何かしらの判断がなされます。それは、統計学的検定を用いて、その薬が「効いた/効かない」という判断です。統計学的検定だけでなく、一般的に、判断をする以上はその判断が駄々しくない可能性はあると思います。そして、その判断は2種類あって、間違いもその判断に応じて2種類あります。

上の表をご覧ください。これは、真実が薬が効く/効かない場合に、統計で効く/効かないと判断する場合のマトリックスになっています。この場合、真実が効くというときに効くという判断をする(表の左上)場合には、これはOKです。また、真実が効かないというときに効かないと判断する(表の右下)場合にもOKです。

 

一方で、真実は効くのに、効かないと判断してしまう(表の左下)場合、これは間違いに当たります。せっかく効く薬を効かないと判断してしまうので、これは企業にとっての、そして治療の選択肢が亡くなったという意味で、社会の不利益に当たります。
また、真実は効かないのに、効くと判断してしまう(表の右上)場合、これも間違いに当たります。効かない薬を患者さんに投与されることになるため、これは患者さんの不利益に当たります。

 

この間違いはどちらも犯したくないものですが、実はトレードオフになっていて、どちらか一方の間違いを起こしにくい状況にすると、もう一方の間違いは起こりやすくなってしまいます。これを同時に制御することはできません。

 

ある一定の確率未満でで間違いを犯さなければよいとする

統計で判断をする以上、間違いを犯してしまうことを説明しました。間違いを犯すのは、何も統計だけではありません。経営判断というのも同じで、ある事業を新規に立ち上げたら、赤字ばっかりの事業になってしまった。これも判断の間違いです。

 

では、このような間違いを犯してしまうという前提に立って、我々はどうすればよいか?を考えるのです。そして、現在の考え方としては、「ある一定の確率以上で間違いを犯さなければよい」とする考えです。通常、患者さんの不利益に当たる間違いを5%未満に、企業(社会)の不利益に当たる間違いを20%(時には10%)未満に抑えるという工夫をします。

 

実はこの間違いの考え方は、症例数の決め方に影響します。これは別のページで解説しています。
ここでは、判断をする以上間違いを犯してしまうことは避けられないこと、そしてその間違いをある一定の確率未満に抑える工夫をする必要があること、この2点を理解してください。

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