二つのエラー

検定における二つのエラーとは?

統計学的検定は「有意 / 有意じゃない」を決めること、と説明しました。つまり、有意かどうかを判断するということです。検定に限らず、判断する際に実は私たちは、二つのエラーを無意識に考えています。

 

株式投資における二つのエラー

少し遠回りをして、株式投資の例を考えてみましょう。
株式投資をするということは、私たちはある株に「投資する / 投資しない」を判断するということです。その際に、私たちはその株価が将来、値上がりするのか値下がりするのかを考えます。つまり、「投資する / 投資しない」の判断に対して、「株価が上がる / 下がる」の結果が得られるわけです。

 

ということは、私たちは投資すると決めた結果、株価が上がればOK、そして、投資しないと決めた結果、株価が下がればOKということになります。では、投資すると決めた結果、株価が値下がりした場合、そして、投資しないと決めた結果、株価が上がった場合にはどうなるでしょうか?これらの場合には、エラーを犯したということになります。
そして、そのエラーの種類にも名前がついています。αエラーとβエラーです。あ(α)わてん坊のエラー、ぼ(β)んやり者のエラーという風に覚えると、覚えやすいです。

 

判断 / 結果 株価が上がる 株価が下がる
投資する OK エラー(αエラー)
投資しない エラー(βエラー) OK

 

 

統計検定におけるαエラー、βエラーとは?

ではここで、臨床試験に話を戻してみましょう。その時、上記の表は以下のように書き換えられます。
つまり、真の薬効がないにもかかわらず検定で優位になった場合にはαエラー、真の薬効があるにもかかわらず検定で有意にならない場合には、βエラーということになります。

 

検定結果 / 真の薬効 薬効あり 薬効なし
有意になる OK エラー(αエラー)
有意にならない エラー(βエラー) OK

 

 

二つのエラーは誰にとって不利益か?

このαエラーとβエラーについては、臨床試験(特にP3などの検証的試験)ではどれぐらいにエラーの確率を抑えなければならないかというのが決まっています。
αエラーは5%に、βエラーは試験によって異なりますが20%〜10%にするのが基本です。なぜαエラーが厳しく、βエラーはそれよりも少し緩いのでしょうか?それは、それぞれのエラーが起こると、誰にとって不利益になるか?を考える必要があります。

 

αエラーは、薬効がないものを誤って薬効があると結論付けるエラーです。つまり、このエラーは薬効がないものを処方される、患者さんにとって不利益になるエラーと言えます。
ではβエラーは何かというと、薬効があるものを誤って薬効がないと結論付けるエラーです。つまり、このエラーは薬効があるのに承認されない、企業にとって不利益になるエラーと言えます。

 

αエラーを5%にすることは、規制当局(国から委託された、医薬品を審査する機関)からの要件でもあります。つまり、国が効果のないものを患者さんに届けるわけにはいかないという姿勢の表れでもあります。
一方でβエラーは試験によって異なります。企業にとってその薬剤開発が失敗できないと判断するのであれば、βエラーを小さくしていく判断がなされます。しかし、βエラーを小さくすると必要な症例数が多くなります(これは症例数設計のところで解説します)ので、開発コストとのバランスを考えていく必要があります。

 

まとめ

  • 何かを判断するときには、二種類のエラーが存在しうる。
  • 統計検定では、その二つのエラーをαエラー、βエラーと呼ぶ。
  • 医薬品開発にとって、αエラーは消費者の不利益につながり、βエラーは企業の不利益につながる。


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