ファンネルプロットとは何か?
出版バイアスとは何か?
フォレストプロットとの違いは何か?
ファンネルプロットの前に出版バイアスとは?
出版バイアスとは、公表されている論文に偏りがあることだ。
統計学的有意になった結果が公表されやすい。
また、通説を覆すセンセーショナルな内容が公表されやすい。
統計学的有意でなかった結果は公表されにくい。
通説通りで話題性に乏しい結果は公表されにくい。
こういう偏りが論文公表の世界には存在する。
メタアナリシスには、特にサンプルサイズが小さかったために統計学的有意にならなかった試験結果が重要である。
サンプルサイズが小さかったために結論が得られなかった命題に答えるのがメタアナリシスの使命の一つである。
こういう理由で、メタアナリシスを実施する際には、出版バイアスの程度を確認しておく必要がある。
そのための方法の一つが、ファンネルプロットだ。
ファンネルプロットとは? 出版バイアスをチェックする
ファンネルプロットの前にファンネルとは何か?
ファンネルとは漏斗(ろうと、じょうご)のことだ。
液体を口の狭い瓶などに入れるときに使う逆三角形の形のものだ。
個々の研究結果の散らばり方が、漏斗を裏返したような形になれば理想で、出版バイアスは小さいと判断できる。
Rでファンネルプロットを書いてみる
Rでファンネルプロットを書く方法を解説する。
metaforパッケージのfunnel()を使う。
まず最初の一回だけmetaforパッケージをインストールする。
install.packages("metafor")
データは以下の通り。
a <- c(3,7,5,102,28,4,98,60,25,138,64,45,9,57,25,65,17)
n1 <- c(38,114,69,1533,355,59,945,632,278,1916,873,263,291,858,154,1195,298)
c <- c(3,14,11,127,27,6,152,48,37,188,52,47,16,45,31,62,34)
n0 <- c(39,116,93,1520,365,52,939,471,282,1921,583,266,293,883,147,1200,309)
dat <- data.frame(a,n1,c,n0)
metaforパッケージのescalc()を使う。
measure=で指標を指定。このデータはオッズ比。
推定値yi と分散viが計算される。
rma.uni()で、method=”REML”を指定し、制限付き最尤推定量(REML)で統合オッズ比と95%信頼区間を求める。
library(metafor)
dat.escalc <- escalc(measure="OR", ai=a, n1i=n1, ci=c, n2i=n0, data=dat)
res.reml <- rma.uni(yi, vi, method="REML", data=dat.escalc)
そして、ファンネルプロットを書く。
funnel(res.reml)
X軸に推定値、Y軸に標準誤差を取って、プロットされている。
中央の線は統合オッズ比の0.79。
図内の右下、推定値も標準誤差も大きめの研究がないことがわかる。
出版バイアスの存在を疑わせる。
その限界を知ったうえで解析を進めるということになる。
Discussionでその限界に触れるほうがよいだろう。
実際のところ、対数表示はわかりにくい。
X軸を対数目盛で真数ラベルにする。
これだとわかりやすい。
funnel(res.reml, atransf=exp, at=log(c(0.25, 0.5, 1, 2, 4)))
ファンネルプロットとフォレストプロットの違い
ファンネルプロットとフォレストプロットは、ともにメタアナリシスで登場するが、全くの別物だ。
フォレストプロットはメタアナリシスの統合結果の主要なグラフである。
このどこがフォレスト(森)なのかというと、全体である。
一つ一つの研究を木に見立てて、全体が森(フォレスト)ということだ。
疫学の授業で最も印象深い言葉を思い出す。
「疫学は森を見て木を知る学問である」
この時の森は人々の集団、木は個々人・一人ひとりの患者さんのことである。
こんなところでもつながっていたかと思う。
ということで、ファンネルプロットは出版バイアスをチェックするグラフで、フォレストプロットはメタアナリシスの個々の試験及び統合結果を表示するグラフという全く別のものである。
まとめ
出版バイアスをチェックするファンネルプロットを解説した。
Rで書く方法も紹介した。
フォレストプロットとの違いも説明した。
何らか参考になれば幸い。
参考書籍
新版も出てる
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] […]