主成分分析は、複数の変数に含まれる情報を、できるだけ失わずに少数の指標へまとめるための手法です。
例えば、体重と身長という2つの変数がある場合に、BMIという1つの変数に縮小させる、というようなイメージですね。
しかし、SPSSで実行すると「固有値」「寄与率」「スクリープロット」「成分行列」など、初学者にはわかりにくい出力が並びます。
本記事では、SPSSのサンプルデータを使い、主成分分析の実行方法から結果の読み方までを、具体例とともにわかりやすく解説します。
SPSSで主成分分析をする前にちょっとだけ復習!
主成分分析(PCA; Principal Component Analysis)は、複数の変数における変動をできるだけ説明する、少数の独立した線形結合(主成分)を求める解析手法。
ですが注意点としては、主成分分析自体は「少数の変数に縮小させる」という目的だけであり、縮小させた変数をどう使うかはまた別問題である、ということ。
そのため、主成分分析をした後に何を知りたいのか?という目的が明確ではないと、主成分分析をした後の結果の解釈ができなくなります。
イメージとしては、実際に測定できない概念の従属変数に対して、身長、体重の独立変数が、それぞれどのぐらい影響するかを知るために重回帰分析の様な式
を作る手法だと考えていただければと思います。
重回帰分析と異なるのは、従属変数が実際に測定されていない概念の変数(体格)となっている点です。重回帰分析は、従属変数も得られているデータでないと解析はできません。
上記の式を一般化すると、下記のように表すことができます。
式の形としては重回帰分析やロジスティック回帰なんかと同様ですが、実在するyではなくて、構成概念のzを想定している点が、主成分分析としては特徴的なものになります。
SPSSで主成分分析を実施する!
それでは実際に、SPSSで主成分分析を実施していきましょう。
データはSPSSにあるサンプルデータを使っていきます。
「ファイル」>「開く」>「データ」をクリックしていきます。
今回は「car_sales.sav」というSPSSに付随しているサンプルデータを使って主成分分析のデモを実施していきます。

「car_sales.sav」を開くと、以下のデータになっています。

今回は、以下の8変数を使って主成分分析を実施し、車の物理的な特徴を説明するような総合得点みたいなものを算出することを想定しております。
第1主成分なら、
という「8つの情報を1つの総合得点にする」イメージです。
| SPSS変数名 | 意味 |
|---|---|
engine_s | エンジンサイズ |
horsepow | 馬力 |
wheelbas | ホイールベース |
width | 車幅(全幅) |
length | 車長(全長) |
curb_wgt | 車両総重量 |
fuel_cap | 燃料積載量 |
mpg | 燃料効率 |
SPSSで主成分分析は「分析」>「多変量」から実施する
データが準備できましたので、実際にSPSSで主成分分析を実施していきましょう!
SPSSで主成分分析を実施するには「分析」>「次元分解」>「因子分析」を選んでいきます。SPSSでは主成分分析もこの「因子分析」の画面から実行します。

そして「変数」に、先ほどの8変数を入れます。

「因子抽出」をクリックします。
ここでは、方法:主成分分析にします。さらに、「スクリー・プロット」にチェックを入れます。
分析対象は基本的に 相関行列 のままでOKです。今回の変数は馬力、車長、重量、燃費など単位がバラバラなので、共分散行列ではなく相関行列を使うことが重要です。SPSSも異なる尺度の変数では相関行列の利用を案内しています。
「抽出する因子」の設定は、最初のデモではデフォルトの「固有値に基づく」で下限を1という設定でまずは良いです。

そして「続行」をクリックして「OK」を押し、主成分分析の解析を実施いたします。
すると、主成分分析の結果が出力されます。
SPSSで実施した主成分分析の結果を解釈する
SPSSで主成分分析を実施すると、結果が出力されます。
「固有値」「寄与率」「スクリープロット」「成分行列」など、初めて見る出力がいくつも表示されます。
しかし、主成分分析ではすべての表を見る必要はありません。まず押さえておきたいのは、次の3つです。
- 固有値と寄与率から、何個の主成分を残すか決める
- スクリープロットから、主成分の数を確認する
- 成分行列から、それぞれの主成分が何を表しているか解釈する
そして、まず確認するのが、SPSSの「説明された分散の合計」です。
今回の結果では、第1主成分の固有値は 5.476、第2主成分の固有値は 1.088 でした。(合計に記載している数値が固有値を意味しています。)

上記の結果を分かりやすく提示すると、以下のような表になります。
| 主成分 | 固有値 | 寄与率 | 累積寄与率 |
|---|---|---|---|
| 第1主成分 | 5.476 | 68.456% | 68.456% |
| 第2主成分 | 1.088 | 13.601% | 82.057% |
| 第3主成分 | 0.600 | 7.501% | 89.558% |
主成分分析において固有値とは、主成分の分散のことを指します。
相関行列を使った主成分分析では、それぞれの変数の分散が1になるため、今回のように8変数を使った場合、固有値の合計は8になります。
第1主成分の固有値は5.476なので、
となります。
つまり、第1主成分だけで元の8変数が持っていた情報の約68.5%を説明できていることになります。
さらに第2主成分を追加すると、累積寄与率は82.057%になります。
したがって、8個あった変数を2つの主成分にまとめても、元の情報の約82%を保持できていると解釈できます。
主成分分析を実施するにあたっては、寄与率を足し合わせた累積寄与率が70%か80%程度以上あれば良いとされています。
第二主成分までで、かなりの情報量が入っているということが言えますね。
SPSSで主成分分析をした結果の見方:固有値1以上を基準にすると2つの主成分が残る
主成分の数を決める代表的な方法の1つが、「固有値が1以上の主成分を残す」という基準です。
今回の結果では、
- 第1主成分:5.476
- 第2主成分:1.088
- 第3主成分:0.600
となっています。
固有値が1を上回っているのは第1主成分と第2主成分だけです。
したがって、この基準では、2つの主成分を採用すると判断できます。
ただし、固有値1以上という基準だけで機械的に決めるのではなく、次に紹介するスクリープロットも合わせて確認することが重要です。
SPSSで主成分分析をした結果の見方:スクリープロットの見方
スクリープロットは、
- 横軸:主成分番号
- 縦軸:固有値
を表したグラフです。
今回のスクリープロットを見ると、第1主成分から第2主成分にかけて固有値が大きく低下し、第3主成分以降は緩やかに低下しています。

つまり、第1・第2主成分までが比較的重要で、それ以降の主成分が持つ情報量は小さいことが視覚的にも確認できます。
固有値1以上という基準でも2成分、スクリープロットを見ても2成分程度が妥当と考えられるため、今回の結果では2つの主成分を採用する判断は自然です。
SPSSで主成分分析をした結果の見方:成分行列から第1主成分を解釈する
次に「成分行列」を確認します。
成分行列に表示されている値は、各変数と各主成分との関連の強さを示す主成分負荷量です。
今回の第1主成分の負荷量は次のようになっています。
| 変数 | 第1主成分 |
|---|---|
| エンジンサイズ | 0.864 |
| 馬力 | 0.716 |
| ホイールベース | 0.765 |
| 全幅 | 0.848 |
| 全長 | 0.768 |
| 車両総重量 | 0.923 |
| 燃料積載量 | 0.874 |
| 燃料効率 | -0.841 |
非常に特徴的な結果です。
エンジンサイズ、馬力、車幅、車長、重量、燃料積載量などは、いずれも第1主成分に対して大きな正の負荷量を示しています。
一方で、燃料効率は−0.841と大きな負の負荷量を示しています。
つまり第1主成分の値が高い自動車ほど、
- エンジンが大きい
- 馬力が高い
- 車体が大きい
- 車体が重い
- 燃料タンクが大きい
- 燃費は悪い
という特徴を持つことになります。
したがって、第1主成分は、「車格・大型高出力性」のような総合指標として解釈することができます。
主成分分析で重要なのは、SPSSが自動的に「第1主成分は車格です」と教えてくれるわけではないことです。
研究者自身が成分行列を見て、
どの変数の負荷量が大きいのか
を確認し、その共通する特徴から主成分の意味を解釈します。
今回であれば、「大型で重く、馬力があり、燃費の悪い車ほど高得点になる」ことから、第1主成分を「車格」や「大型高出力性」と解釈しています。
このように、主成分分析では統計的な結果と、分析対象に関する専門知識の両方を使って主成分を解釈することが重要です。
SPSSで主成分分析をした結果の見方:第2主成分はどのように解釈する?
第2主成分では、次のような負荷量になっています。
| 変数 | 第2主成分 |
|---|---|
| エンジンサイズ | -0.351 |
| 馬力 | -0.538 |
| ホイールベース | 0.568 |
| 全幅 | 0.163 |
| 全長 | 0.501 |
| 車両総重量 | -0.055 |
| 燃料積載量 | 0.006 |
| 燃料効率 | 0.267 |
第2主成分では、
- ホイールベース:0.568
- 全長:0.501
が正方向に比較的大きく、
- 馬力:−0.538
- エンジンサイズ:−0.351
が負方向になっています。
したがって、「車体の長さ」と「エンジン・馬力」の対比を表す軸として解釈できそうです。
ただし、第2主成分の寄与率は13.601%であり、第1主成分の68.456%と比べるとかなり小さくなっています。
そのため、このデータではまず第1主成分の解釈が中心になると考えるとよいです。
統計解析やモデル選択でお悩みの方へ
ここまで、SPSSを使った主成分分析の実施手順について解説してきました。
統計解析で行き詰まり、間違ったモデルのまま進めてしまうと、査読で厳しい指摘を受けたり、研究のやり直しを余儀なくされたりするリスクがあります。少しでも「これで合っているのだろうか?」と迷ったときは、すぐに専門家に相談し、疑問を解消した状態で研究を進めることが成功の近道です。
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まとめ:SPSSの主成分分析では「固有値→スクリープロット→成分行列」の順に見る

SPSSで主成分分析を行ったときには、次の順番で結果を見ると理解しやすくなります。
① 固有値・寄与率を見る
何個の主成分を残すかを検討します。今回なら、固有値1以上の基準では2成分です。
② スクリープロットを見る
固有値が大きく低下してから平坦になる位置を確認します。今回も2成分程度が妥当と判断できます。
③ 成分行列を見る
各主成分にどの変数が強く関連しているかを確認し、その主成分が何を意味しているかを解釈します。今回の第1主成分は、車体の大きさ・重量・馬力などが正方向、燃費が負方向だったため、「車格・大型高出力性」を表す主成分と解釈できます。
今回のSPSSによる主成分分析では、8つの自動車スペックを2つの主成分にまとめることができました。
特に第1主成分だけで68.456%、第2主成分まで合わせると82.057%の情報を説明できています。
つまり、
に情報を圧縮しても、元の情報の約82%を残すことができたと考えられます。






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