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基本的な3種類の臨床試験とその概要をお伝えします。

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臨床試験とは、ヒトに投与する試験のこと

「シーズ探索から販売まで」で少し記載しましたが、臨床試験とは、ヒトに投与する試験のことです。
この試験が実施されているということは、マウスやサルなどの動物で、その薬の候補の有効性や安全性が確認できています。
そのような動物での試験を「非臨床試験」や「前臨床段階」などと呼んだりします。

臨床試験の種類は様々である

一口に臨床試験と言っても、様々な種類の試験があります。
例えば、健康成人に投与する試験、患者さんに投与する試験、腎機能や肝機能が低下している患者さんに投与する試験など、様々な試験があります。
その試験が何を目的にするかによって、第I相試験、第II相試験、第III相試験、臨床薬理試験などと呼ぶことがあります。

第I相試験の概要

第I相試験は2種類ある

第I相試験は、健康成人の被験者さんに協力してもらって、その薬剤の薬物動態、安全性及び忍容性を確認する段階です。
その試験のデザインによって、単回投与試験(SAD;Single Ascending Dose)や反復投与試験(MAD;Multiple Ascending Dose)などと呼びます。
非臨床で確認された、毒性が出る用量の何十分の一、何百分の一の用量で試験をしていきます。

漸増法を使うのが一般的

第I相試験では、最も少ない用量から安全性が確認でき次第、次の用量の試験をするという、用量漸増法という方法を用います。
用量の上げ方は、大体3の公比で上げていくことが多いです。
つまり、0.3mg → 1.0mg → 3.0mgという感じです。

なぜ健康な人に投与するのか?

第I相試験では、まず健康成人に投与します。
この理由としては、何か有事のことがあったときに、健康成人の方が治癒しやすいということが挙げられます。
第I相試験では、世界で初めてヒトに投与する試験でもあるため、万が一を想定した試験を組む必要があります。
また、健康成人であれば比較的短期間で参加者を集めやすいこと、他の薬剤を使用していない場合が多いため、純粋にその試験薬の薬物動態を確認しやすいことが挙げられます。
そして、健康成人でのSADとMADで安全性が確認された後、患者でのSADやMADを実施することがあります。

過去の悲劇

第I相試験で有名な悲劇としては、2006年に第I相試験が実施された「TGN1412」というモノクローナル抗体が有名です。
6人の健康ボランティアに使用され6人全員が、直後から全身の痛みや呼吸困難を訴え、意識がなくなり1時間後には多臓器不全のためICUに入院したという事件でした。
このように、安全性を担保して実施することが大前提ですが、それでも完全に安全である保障はできないのが臨床試験です。

第II相試験の概要

用量反応性を確認する試験

第II相試験は、第I相試験で確認できた用量の範囲の中で、今度は患者さんを対象として用量の反応性を確認する試験です。
容量の反応性とは、有効性や安全性を指しています。
この中で、リスクベネフィットが一番良い用量を採用して第III相試験に移行します。
第II相試験は反復投与が基本で、薬剤のの半減期などを考慮して定常状態になるまでの期間、反復投与されることが多いです。

PoCという概念

第II相試験は、基礎的な研究で予想された薬の効果が、実際に動物またはヒトへの投与試験により証明されるかどうか?ということも確認されます。
これをProof of Concept(PoC;ポック)と呼びます。そのため、第II相試験は倫理的に許される限り、単剤での試験を実施します。

色々な種類の第II相試験

第II相試験には、単剤での用量反応試験を中心として、様々な試験の仕方が考えられます。
例えば、PoCを取るために単剤で試験を実施しますが、その疾患では様々な薬剤を併用することが多い場合には、併用した時の新薬の有効性や安全性はどうか?といった試験を実施することも考えられます。

第III相試験で採用する用法用量を探索するというイメージ

第II相試験は様々な内容の試験方法が考えられます。そのため、ひとくくりにすることが出来ないのですが、イメージとしては、第III相試験で採用する用法用量(レジメン)を確認することを目的とするのが第II相試験です。
そして、第II相試験で探索的に確認されたレジメンを用いて、第III相試験で検証するという流れになります。

第III相試験の概要

その薬剤の有効性と安全性を確立する試験

第III相試験とは、その薬剤の有効性と安全性を確立する試験です。
そのため、この試験で設定した主要評価項目(プライマリーエンドポイント)について、比較対象との統計的な検証が求められます。
そのため、この試験での統計の役割はすごく重要になってきます。
主要評価項目としては、有効性の項目を設定することが多く、症例数も主要評価項目に基づいて設定します。

同じ試験を二つ実施しなければならない?

アメリカの薬剤の審査機関であるFDAは、第III相試験を同じデザインで2つ実施することを求めています。
この第III相試験が2つとも主要評価項目を達成すれば、ほぼ間違いなく薬剤は承認されます。
もし1つだけしか達成できなかった場合には、その後の審査の段階で色々と説明をする必要があります。
ただし、これはその薬剤がターゲットとする患者数にも依存するため、例えば、患者巣が少ない疾患であれば、1つの第III相試験だけで承認されることも多いです。

安全性の検証は難しい

第III相試験であっても、安全性に対する検証は不可能です。
それは有害事象や副作用の発生率の低さと、その発生率に対する検証のための症例数がとても必要になるからです。そ
のため、第III相試験では確認しきれなかった安全性に対する確認を、承認後に求めることが多いです。
これが全例調査というもので、最低何例は確認しなさい、という当局からの宿題になります。

まとめ

臨床試験は、その目的と試験規模によって、大きく3つに分かれます。
どれも重要な試験ですが、第III相試験で失敗した場合には薬の申請が難しくなります。