この記事では、「統計学を学ぶ意義や必要性重要性メリットは?なぜ必要で役に立つか使い道を解説」に関して解説しています。
統計学を学ぶ意義や使い道はどこにあるのでしょうか?
「統計学」と聞くと、あなたは何を想像しますか?
もしかしたら「T検定」、あるいは「カイ二乗検定」なんかを想像するかもしれません。
中には、もう何も考えられず鳥肌が立ってしまう、という方もいるかと思います。
実は今から20年〜30年前ぐらいであれば、統計学といえばT検定、統計といえばχ二乗検定。
統計学に関してこれぐらいのイメージ・知識さえあれば問題なかったと言われています。
ですが、今では時代も変わり、統計学に関してそれだけの知識では論文を投稿するどころか、医薬研究を実施することさえ難しくなりました。
「統計学が最強の学問である」という本も発売され、一時期話題になりましたね。
この記事では、なぜ最近になって統計学の必要性や重要性が再認識されているのかを考えてみます。
統計学を学ぶ意義:必要性や重要性やメリットが再認識されだした理由
なぜ今、臨床研究において統計学が重要視されているか。
私が考える理由は、以下の3つです。
- 仮説や研究デザインが複雑化しており、統計解析も複雑化している
- 統計パッケージの普及によって難しい解析も実施できるようになった
- 臨床研究の論文のレフリーに統計の専門家がいる
これらは、医薬品開発が原因の難しい疾患にシフトしていった歴史と関連していると思います。
これまでは、統計が必要ないほど、薬の力だけで目に見える効果が現れていました。
ですが今では、薬による有効性や安全性が劇的ではなく、本当にこの薬を薬として販売してよいか?を判断する必要が出てきたのです。
それに伴い、薬の開発(臨床試験)だけでなく観察研究を含めた、臨床研究全体で統計解析が複雑化している現状があると思います。
臨床研究における統計学の重要性
そこで臨床研究に重要なのが、統計学。
今ではすごく複雑な解析手法が次々に生まれてきており、それらを使いこなす必要があります。
昨今、インパクトファクターの高い雑誌には、必ずといっていいほど統計の専門家がレフリーとなっています。
なぜなら、複雑な臨床研究の結果が本当に適切な統計解析によるものなのかを判断する必要があるからです。
つまり臨床研究で論文を投稿するにも、必ず統計学を学んで適切な統計の処理をする必要性が出てきたのです。
そのため、医薬業界で優れた功績を残したいと思っているのであれば、統計学の必要性は益々高まっていくことになります。
p値の結果(有意差があるかどうか)だけで結果の良し悪しが決まる時代は終わりました
インパクトファクターの高い雑誌に統計の専門家がレフリーとしていることにも絡むのですが、現在ではp値の結果(つまり、有意差があるかどうか)だけで研究の良し悪しが決まる時代が終わっています。
2016年、アメリカ統計協会(ASA)はP値に関する声明を発表しています。
ASAが指摘したことは全部で6つあり、6つとも全て重要な指摘なのですが、私が読んだ限り重要だと思った3つのポイントがあります。
- P値や統計的有意性は、効果の大きさや結果の重要性を意味しない
- 科学的な結論や、ビジネス、政策における決定は、 P値がある値(有意水準)を超えたかどうかにのみ基づくべきではない。
- 適正な推測のためには、すべてを報告する透明性が必要である
詳しくは「P値の問題点とは?不要論もある統計検定に対してアメリカ統計協会の声明が指摘していること」の記事を見ていただければと思いますが、一般的に認識されているp値のイメージとは真逆と言っていいほどの声明になっているんじゃないかと思います。
そのような背景もあり、臨床研究においてもちゃんとした統計の知識が必須になっています。
統計学を学ぶメリットは?なぜ役に立つの?
2009年のNew York Timesに、Googleのチーフエコノミストである、ハル・ヴァリアン博士が以下のように述べました。
I keep saying that the sexy job in the next 10 years will be statisticians. And I am not kidding.
日本語に直すと、以下のような意味です。
今後10年間で最もセクシーな仕事は、統計学者であると常にみんなに広めている。冗談抜きでね。
統計の分野において日本はアメリカからかなり遅れておりますので、日本では現在(2019年)から今後10年がセクシーな仕事になるかもしれません。
また、ハル・ヴァリアン博士は以下のように続けています。(日本語訳のみ掲載します。)
データを取り、それを理解して処理し、そこから価値を引き出し、可視化し伝達する、といった能力は、今後数十年にわたって、プロレベルだけでなく小学生から大学生までのあらゆる教育的レベルにおいても、きわめて重要なスキルとなるだろう。
全ての人が統計学のメリットや重要性に気づく必要がある
このハル・ヴァリアン博士が言っている通り、統計学はあらゆる分野・あらゆる世代で必要な学問の一つになってきます。
もう、全てを統計の専門家に任せればよいといった時代は、終焉を迎えています。
医薬研究に携わる方も「データを取り、それを理解して処理し、そこから価値を引き出し、可視化し伝達する」という能力は必須だと私も思います。
なぜなら、医薬研究において、統計学は「データを解析する」だけではないためです。
むしろ、目的に合ったデータをどのように取るのか?という方が重要になってきます。
統計担当者は、以下の図の緑の考え方をしているためです。
そのため、統計の専門家でなくとも、統計学を発揮させるにはどのような考え方をすれば良いのか?(上記の緑の考え方)を知って、試験の計画段階から統計担当者を巻き込むことが非常に重要です。
統計学とは簡単に説明すると?まとめることと計画すること
計画段階から統計を考えることの重要性は、「統計」という字を見るだけでも、知ることができます。
統計という言葉は、「統」と「計」の二つの漢字に分けることが出来ますね。
実はこの漢字二文字は、統計ということを実に的確に言い当てているのです。
統計の「統」はまとめるという意味。
「統」という漢字を辞典で調べてみると、「一つにまとめる」という意味があるようです。
取得した生データを眺めるだけでは、何もわかりません。
データは取得した後に平均や分散を算出するなどして、ある指標に変換しなければなりません。
このような作業を「要約」と言います。
そして、平均値や分散を要約した値という意味で、「要約統計量」といいます。
統計の「計」は計画するという意味。
「計」は文字通り、計画するという意味です。
実は、統計的検定とは、事前に計画したものだけが検証的な結果として扱うことが出来ます。
つまり、事前に綿密に計画したデータに対して検定をする。
このような「計画に基づいたデータ」の統計的検定結果だけが重要な意味を持つ、という意味です。
では何を計画するのか?
というと、例えばサンプルサイズ(取得するデータの数)を事前に計画する、というのも計画の一つです。
このような意味を考えると、計というのは検定を計画していくということになります。
統計学を学ぶ意義や必要性重要性メリットとは?まとめ
医薬研究において、ますます統計学の重要性が見直されてきました。
統計は、「データを解析する」だけでなく、「目的に合ったデータを取得する」ということが非常に重要な考えです。
そのため、統計の専門家だけでなく、医薬研究に関わる全ての人が統計の考え方を持つ必要があります。
ですが、本当に統計が苦手な方もいるでしょう。
そんな方にとっては、絶対に医薬統計の解析を委託したりした方がいいですね。
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