人年法とは?どんな計算方法でメリットデメリットは何があるのか?

疫学分野の指標には、有病率と罹患率という、一見すると同じような意味にみえる指標があります。

有病率は、ある一時点において疾病を有している人の割合を表す指標ですので、直感的に捉えやすいものです。

これに対し、罹患率は一定期間にどれだけの疾病者が発生したかを示す指標であり、発生率の一種と説明されます。

罹患率が上がるときには、なにかその裏に隠された原因(発生要因)がある場合が多いため、罹患率は疾病と発生要因との因果関係を探る有用な指標と考えられています。

しかしながら、罹患率は、観察期間の概念を含む「人年法」を用いて計算されるため、直感的にはわかりにくい指標です。

この「人年法」についてわかりやすく解説していきます。

 

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目次

人年法を理解するために重要な割合(Proportion)と率(Rate)の違い

冒頭であげた例である有病率と罹患率はどちらも疾病の発生頻度を問題にしており、「率」という語を用いています。

有病率は、1,000人中5人に発症が認められる場合であれば、5/1,000 = 0.005 ( 0.5% )と計算されます。

これは観測集団に対する「割合 ( proportion )」を求めているのに他なりません。

なので本当は有病率ではなく、有病割合とした方が誤解がないです。

 

他方、罹患率 ( incidence rate )はまったく別の計算方法を用います。

疫学において、「率 (rate) 」は単位時間あたりの頻度という意味をもっており、日本語では、proportionとrateを区別せず使用するためわかりにくくなってしまいます。

 

人年法の基礎である人時間とは

proportionである有病率とrateである罹患率では何が異なるのでしょうか。

 

それは、観察期間を考慮に含めるかどうかです。

rateの計算には人時間という発想が使われます。

 

上の例の5人の発症者のうちの1人(Aさんとしましょう)が観察を開始してから3ヶ月経過時点で発症したとします。

そうすると、発症するまでの3ヶ月間 Aさんを観察できたということになります。

これを人時間と定義して、Aさんの人時間は3ヶ月となります。

この場合、単位は人月と言いますが、一般的には1年単位で表現することが多いです。

Aさんの人時間は、3ヶ月 ÷ 12ヶ月 で0.25人年となります。

 

人年法による率の計算

上記のような人時間を用いた計算を人年法と呼びます。

人年法による率の計算は以下の定義です。

具体的に見ていきましょう。

ある1,000人の集団について、観察期間を1年とした調査を行った結果、5人にイベントが発生しました。

5人のイベント発生のタイミングは

とします。

 

各被験者の人時間は、Aさんが0.25人年、BさんとCさんは0.5人年、DさんとEさんは0.75人年となります。

また、その他の995人は1年間追跡した結果、未発生でしたので、それぞれ1人年となります。

 

この1,000人の人時間の総和を取ると

となり、人年法による率は

となります。

 

人年法による率の意味と使い方

人年法によって求めた上記の率はどのような意味をもつでしょうか。

ストレートに読めば、1人年あたり0.00501件発生となります。

1人を1年間観察したときに発生する確率は0.501%という具合に見ることもできます。

 

一般的には、この率に1,000をかけた5.01や100,000をかけた501を用いて

1,000人を1年間観察すると5.01件発生するとか、100,000人を1年間観察すると501件発生するというように使われます。

 

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人年法の良い点と欠点は?

ここまでで、人年法について理解できたかなと思います。

次に、人年法に関してのメリットとデメリットをまとめていきますね。

 

人年法のメリット

イベントの発生が可逆的(疾患であれば治療・治癒可能な場合)なものであったり、イベントの発生後、そのイベントの存在を見えにくくしてしまうイベントがさらに発生(感染症の感染後に死亡など)してしまったりする場合、ある1時点におけるイベントの発生割合は適切なリスク評価指標とはなりませんし、場合によっては重大な誤りをおかしかねません。

これに対し、人年法は観察期間を考慮して計算されますので、対象集団の適切なリスク指標となり得ます。

また、観察期間を考慮するということは、転院などによりイベント発生前に打ち切りとなった被験者も含めて計算されることになるのでバイアスも起こりにくくなります。

さらに、観察期間を考慮するだけで、開始時点は直接的に問題とはならないため、被験者の背景因子が一定であるという条件の下、時期の異なる被験者たちを用いて計算することも可能な点もメリットです。

 

人年法のデメリット

人年法による率は適切なリスク指標ではありますが、総じてコストのかかる方法でもあります。

被験者のリクルートにあたっては、その時点までにイベントが発生していないことを確認しなければなりません。

自然治癒する疾患やイベント発生の確認が難しい事例などでは困難が生じます。

 

また、イベント発生時点を正確に把握する必要があります。

ここの正確性が担保されないと重大なバイアスが生じることになります。

入院患者を対象とした研究などであれば比較的容易かもしれませんが、一般的なコホートを対象とする場合などはこの部分で膨大なコストがかかります。

 

まとめ

いかがでしたか?

本記事では人年法に関して解説させていただきました。

理解につながったのなら幸いです!!

 

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