この記事では「例数と件数の違いは?有害事象や副作用報告で使われる2つの数値の意味」ということでお伝えします。
有害事象や副作用報告などでよく見る、本試験での有害事象はXX例YY件だった、というような記載。
よくよく考えれば、例数と件数の違いってどこにあるんだろうか?という疑問が湧きますよね。
そのためこの記事では
- 例数と件数の違い
- 例数の解析と件数の解析の仕方
についてお伝えしていきます!
例数と件数の違いとは?
そもそも例数と件数はどう違うのでしょうか?
結論から言えば、例数は「症例数」を数えているもので、件数とは「事象数」を数えている、という違いです。
具体的に、有害事象の例で考えてみましょう。
例数と件数の違いを有害事象で考えてみる
まずは例数と件数の違いを有害事象で考えてみましょう。
Aさん、Bさん、Cさんの3人がいて、試験中に以下のように有害事象が発生したとします。
この時、「頭痛」という有害事象はAさんとBさんに起こっているため、2例に発現しています。
そしてAさんは頭痛を1回、Bさんは頭痛を2回発現しているため、3件発現したことになります。
そして「風邪」はAさんにだけ1回発現しているため、1例1件の発現、という数え方です。
そのため今回の例だと、以下のような数え方になります。
- 有害事象の発現は2例4件
- 頭痛の発現は2例3件
- 風邪の発現は1例1件
そのため、例数は「その有害事象を発現したかどうかの有無」を数えていることに相当し、件数は「その有害事象を発現した回数」を数えていることに相当することがわかります。
件数の数え方は「定義」によって異なる
件数の数え方は、実はとても複雑です。
というのも、件数の数え方は「定義」によって異なるから。
例えば以下のように、最初に頭痛を発現した2日後も頭痛があった場合は、どのように数えたら良いでしょうか?
考え方としては2通り考えられて、
- 最初の頭痛が続いていると考える(この場合、1件と数える)
- 新たな頭痛が発現したと考える(この場合、2件と数える)
どっちの定義を採用するかで、1件になるのか2件になるのかが変わります。
そのため重要なのは、件数の数え方の定義を事前にちゃんと決めておく、ということです。
定義に対して正解や不正解はなく、「この試験ではこの定義で件数を数えました」という計画を立てていること自体が重要になるんです。
例数の解析・件数の解析
例数と件数の違いがわかったところで、例数と件数のそれぞれの解析手法について解説していきます。
例数の解析の仕方
例数に関しては上述の通り、「その有害事象を発現したかどうかの有無」を数えているため、データとしては2値のカテゴリカルデータになります。
2値のカテゴリカルデータであれば、例数を数えるだけでなく、目的によっては
- 分割表を作成してオッズ比やリスク比を算出
- カイ二乗検定(もしくはフィッシャーの正確確率検定)
- ロジスティック回帰分析
なんかを適用することが可能です。
件数の解析の仕方
一方で、件数の解析の仕方は複雑です。
件数は「その有害事象を発現した回数」を数えていることに相当するため、本質的にはカウントデータの扱いになります。
2値のカテゴリカルデータではないため、例数のように分割表を作ったりカイ二乗検定を実施したり、ロジスティック回帰分析を適用させることはできないのです。
メルマガ会員からの質問で「件数に対してカイ二乗検定を実施していいですか?」を聞かれることがあるのですが、件数に対してカイ二乗検定はNGなんです。
じゃあどんな解析ができるかと言えば、以下の2パターン。
T検定やカイ二乗検定などと比べるとあまりメジャーな解析手法ではないため、結局のところ「A群では10例15件、B群では9例20件だった」など、件数を併記するだけにとどめているのが一般的かなと思います。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では「例数と件数の違いは?有害事象や副作用報告で使われる2つの数値の意味」ということでお伝えしました。
- 例数と件数の違い
- 数の解析と件数の解析の仕方
について理解につながったのなら幸いです!
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