この記事ではE値(E-value)について解説します!
- E値(E-value)って何を見ている指標?
- どんな結果になるとどんな解釈ができる?
- 実際の計算方法は?
- 論文への反映はどうすればいいのか?
ということをお伝えします!
便利な値でもあるので、ぜひ一度計算してみてください!
統計解析でのE値(E-value)の概要とその重要性
E値(E-value)が用いられる目的を一言で言えば、「結果の頑健性を評価する」ためです。
では、何に対する頑健性か?と言えば、未測定の交絡因子に対する影響の頑健性を確認することです。
E値が用いられる場面は、ほとんどの場合、ランダム化していない観察研究を想定されています。
ランダム化されていれば、既知の交絡因子も未知の交絡因子も含めて、集団全体としてバランスが取れていると考えることができるためです。
観察研究では、多くの場合、未観測のデータ(背景情報)が存在します。
未観測のデータの中に、もしかしたら結果に影響を与える背景情報があり、未観測のデータを仮に考慮できたとしたら、手元にある結果は違ったものになるかもしれません。
そのため、どれぐらいの影響度合いのある未観測データが交絡因子として存在すると、今回の結果が覆されるか?、ということを示した指標がE値です。
「結果が覆される」の意味は多くの場合「有意だった結果が有意じゃなくなる」で用いられます。
E値の性質は?
E値は最小が1であり、値が大きいほど今回の結果は頑健性があるとされる指標です。
結構、直感的に理解しやすいですよね。
そしてE値は様々なアウトカム(目的変数)に対応しています。
そのため、リスク比、ハザード比、オッズ比など、多くの指標に対して用いることができます。
E値(E-value)の感度分析(感度解析)における役割
そもそも感度分析(感度解析)とは何だったかといいますと、下記のような解析です。
得られた研究結果がどの程度ロバスト(頑健)であるか、つまり様々な仮定や条件の変化に対してどれだけ安定しているかを評価する方法
例えば、欠測値への対処法は様々存在します。
メインとなる対処法(例えば多重補完法)とは別の対処法(例えば混合効果モデル)でも同じ結論(安定した結果)が得られるのか?を確認することは、感度解析の一つになります。
また、正規分布を仮定してt検定を実施したが「正規分布」という条件を無くしたノンパラメトリック検定でも同じ結論(安定した結果)が得られるのか?を確認することは、感度解析の一つです。
E値が確認している感度解析
E値に対する感度分析の意味は、未測定の交絡因子に対する影響の頑健性を評価しています。
つまり、今回の解析で含めた交絡因子だとこのような結果(有意)になったが、仮に未測定の交絡因子を解析に含めた場合有意な結果が有意じゃなくなる(結果が覆される)にはどれぐらいの影響度合いの交絡因子が必要か?を確かめるための感度分析の指標です。
図示すると、下記の通り。

E値の解釈は?
上記でも記載しましたが、E-valueは常に1以上の値を取ります。
E値が1に近いほど、今回得られた結果の頑健性が弱く、大きいほど今回得られた結果が頑健であることを示しています。
例えばE値が3.0の場合、得られた結果(例えば相対リスクRR)に対して、要因→アウトカムのRRを1にするための未測定の交絡因子は少なくともRR=3.0の因子が必要、という意味です。

ただし重要なのは、E-valueは単独で解釈するのではなく、研究の文脈や既存の知見と併せて総合的に評価することです。
E-valueには明確なカットオフ値はないため、値の大小だけで機械的に判断するのではなく、研究分野の特性や臨床的な重要性を考慮して解釈することが重要です。
医学研究におけるE値(E-value)の使用例
では実際に、論文でE値が使用されている例を見ていきましょう。
こちらをご紹介します。(JAMA. 2020;323(24):2493-2502. doi:10.1001/jama.2020.8630)

Resultの記載の記載を見ると、下記のようになっています。
In adjusted models with those receiving neither drug as comparison, cardiac arrest was more likely in patients receiving hydroxychloroquine + azithromycin (adjusted OR, 2.13 [95% CI, 1.12-4.05]; E-value = 1.31), but not hydroxychloroquine alone (adjusted OR, 1.91 [95% CI, 0.96-3.81]) and azithromycin alone (adjusted OR, 0.64 [95% CI, 0.27-1.56]), and also in patients taking hydroxychloroquine alone vs azithromycin alone (adjusted OR, 2.97 [95% CI, 1.56-5.64]; E-value = 1.81).
「adjusted OR, 2.13 [95% CI, 1.12-4.05]; E-value = 1.31」の意味は、未測定の交絡因子が、少なくとも1.31のORで関連している場合、信頼区間の下限がnull(OR=1)を含むようにシフトする可能性がある、という意味です。
点推定値2.13ではなく、信頼下限の1.12に対するE-valueであることに注意しましょう。
E-valueは点推定値と信頼下限の両方を記載すると良いです。
E値(E-value)の計算方法
E-value自体は簡単に計算可能です。
E-value calculatorというサイトがあり、このサイトで計算が可能です。
先程お示しした論文(JAMA. 2020;323(24):2493-2502. doi:10.1001/jama.2020.8630)の値を入力すると、信頼下限のE-valueが再現できます。

簡単に計算できますが、このサイトで計算した値を論文で用いる場合には、論文を引用してください。

まとめ
この記事ではE値(E-value)について解説しました!
- E値(E-value)って何を見ている指標?
- どんな結果になるとどんな解釈ができる?
- 実際の計算方法は?
- 論文への反映はどうすればいいのか?
ということをお伝えします!
便利な値でもあるので、ぜひ一度計算してみてください!
この記事の内容は動画でもお伝えしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
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