医学系や看護系のの研究で、特に人を対象とした研究を行うときは、適切な研究計画書が用意できなければ、倫理委員会から認可を得ることができません。
また、最適な結果を得るためには、最適な計画を立てなければなりません。
多くの方はデータが取られた後に「さぁどうしようか?」と考えますが、計画がしっかりしていれば、データ取得後に迷うことは全くありません。
この記事では研究計画書の書き方について、とくに研究の方法について簡単に説明していきます。
医学系看護系研究に必要な研究計画書とは?
研究計画書は言葉の通り、これから行う研究の計画書です。
人を研究対象とした医学系実験では、
- 臨床研究法という法令
- 倫理的指針
といったルールが存在しています。
研究計画はこの指針に沿って、作成する必要があります。
また、世界医師会により、
ヘルシンキ宣言:「研究計画書は、検討、意見、指導及び承認を得るため、研究開始前に関連する研究倫理委員会に提出されなければならない。」と定められています。
そのため、実際に研究を行っていくには研究計画を各機関の倫理委員会の承認を得る必要があります。
医学系の研究計画書ではこれらのルールを遵守する必要があります。
研究計画書を書く前に
研究計画書を書く前に研究計画をしっかりと練る必要があります。
特に次の観点から計画を見つめる必要があります。
- 研究計画は実行可能か
- 研究目的は科学的に興味深いか
- 研究内容に新規性はあるか
- 研究計画中に倫理的な問題はないか
- 予測される研究成果に社会的意義は存在するか
また、研究上の仮説しっかりと検討する必要があります。
- 誰を対象として
- どのような介入を実施して
- 何と比較して
- どのような結果になるか
という仮説を事前に用意する必要があります。
>>臨床研究とは?
医学系看護系研究の研究計画書の要素
研究計画書には次のような内容で書いていきます。
- 研究の名称
- 研究実施体制
- 研究目的と意義
- 研究の科学的合理性の根拠
- 研究の方法と期間
- インフォームド・コンセントを受ける手続き
- 個人情報の取り扱いと匿名化の方法
- 研究対象者に生じる負担と予測されるリスクと利益とその科学的評価、及びリスクに対する対策
- 試料・情報等の保管と破棄の方法
- 研究機関の長への報告内容と方法
- 研究の資金源等,研究機関の研究に係る利益相反及び個人の収益等, 研究者等の研究に係る利益相反に関する状況
- 公的データベースへの登録
- 研究対象者等及びその関係者からの相談等への対応方法
- 代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合の手続き
- 緊急かつ明白な生命の危機が生じている状況での研究に関する要件の全てを満たしていることについて判断する方法
- 研究対象者等への経済的負担又は謝礼
- 重篤な有害事象が発生した際の対応
- 健康被害に対する補償の有無及びその内容
- 研究対象者への研究実施後における医療の提供に関する対応
- 研究実施に伴う重要な知見が得られる場合に関する研究結果の取扱い
- 委託業務内容及び委託先の監督方法
- 本研究で得られた試料・情報を将来の研究に用いる可能性
- モニタリング及び監査の実施体制及び実施手順
- 参考資料・文献リスト
研究対象によっては項目が減ることもありますが、ルールがしっかり決まっているためたくさんありますね。
全てを解説すると一冊の本になるくらいの量になってしまいます。
ここでは”⑤研究の手法と期間”の書き方について説明していきます。
介入研究と観察研究
“研究の手法”を書くにあたって重要となるのは、
行う研究が、”介入研究”か”観察研究”なのかを考える必要があります。
その理由は、”介入研究”か”観察研究”で各項目が変わっていくからです。
介入研究は能動的に治療行為を行うときに該当します。
観察研究は能動的な治療行為を伴わないとき、
または、能動的治療行為を行うが、治療行為が確立していて群間の比較を行わないときに該当します。
また、研究が「後向き」か「前向き」かでも記入の仕方が異なっていきいます。
前向き研究は、研究を立案、開始してから新たに生じる事象について調査する研究を、
後向き研究は、過去の事象について調査する研究を指します。
研究の手法と期間のサブ項目
“⑤研究の手法と期間”では次のようなサブ項目を含めます。
- 研究手法の概要
- 研究の内容
- 研究対象者の選定方針
- 予定する研究対象者数
- 対象者数の設定根拠
- 評価の項目とその方法
- 統計解析方法
- 観察の対象となる治療法
- 観察及ぼ検査項目とその実施法
- 研究対象者の研究参加予定期間
- 研究参加者に対する研究終了後の対応
- 研究参加の中止基準
- 研究の変更、中断・中止、終了
- 研究実施期間
- 他機関への試料・情報の提供
この項目のうち青色の項目は介入研究では該当しないサブ項目です。
この項目のうち赤色の項目は後ろ向きでは該当しないサブ項目です。
サブ項目”統計解析方法”について
研究解析方法のサブ項目で統計解析方法を明記する必要があります。
また、単に用いる統計解析方法を列挙するだけではなく、有意性のしきい値や、ハズレ値の条件など統計の条件についても事前に定め記載します。
また、計測の中止や脱落、欠損値などデータの取り扱い方などについても規定します。
ここで記載していない統計手法を実験後に用いる場合、統計的な間違いが生じることがあるのでしっかりと書く必要があります。
医学系看護系の研究計画書の書き方まとめ
- 人を対象した研究にはルールが存在する
- 人を対象した研究を行うときは倫理委員会から認可を得る必要がある
- 研究計画書内の研究内容は、介入研究か観察研究かで書く項目が変わる
各機関の倫理委員会によって様式の違いがあるので詳しくは各機関のルールに従う必要があります。
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