- 統計解析したけど有意差がでなかったけどどう考察すればいいの・・・?
- p値が0.05を下回ってないから論文は書けない・・・?
- 医学論文がアクセプトされるために重要なこととは・・・?
あなたは上記のようなことで困っていませんか?
もしかしたら、医学論文への投稿は「p値が0.05を下回って有意差がある場合にしかできない」と思っていませんか?
実は有意差がない場合であっても論文を出すことはできますし、考察を適切に行えばかなり価値がある論文になります。
この記事では、医学論文を書くにあたって有意差がでなかった時の考察のヒントや、そもそも医学論文を書くために重要なこと・絶対にやってはいけないことを整理してお伝えします!
有意差が出ないと医学論文は出せないの?考察の書き方は?
コンサルをしていて、多くの方は「有意差がない限り論文は書けないのでは」という疑問を持っていることに気付きます。
あなたはどう思いますか?
答えは「有意差が出ていなくても医学論文は出せる」ということ。
なぜなら、論文で一番重要なのは”クリニカルクエスチョン”だからです。
クリニカルクエスチョンに対する答えと、なぜそのような結果が出たのかという考察(Discuttion)が十分にできていれば、論文を出すことが可能です。
p値が大きく有意差がでなかった結果の重要性
例えばクリニカルクエスチョンが「新薬と標準治療薬でHbA1cの低下が違うのかを明らかにしたい」ということである場合。
結果としては、「新薬と標準治療薬でHbA1cの低下が違う」と「新薬と標準治療薬でHbA1cの低下が違わない」という、どちらかの結果が出ることになります。
そのとき、どちらの結果も世の中としてはとても有意義な情報なのです。
なぜなら、同じような新薬を開発している会社が複数あった場合、「新薬と標準治療薬でHbA1cの低下が違わない」という結果によって、各会社の新薬開発がストップするかもしれません。
そうなると、結果のない薬を投与されていたかもしれない患者さんに対して、無駄な投与をしなくて良いという結果に繋がります。
これは、世の中にとって重要な情報です。
実際に私がNEJMに掲載された論文の一つは、P値を全く記載せずに掲載されています。
そもそもP値とは何か?を理解できれば、P値の大小で一喜一憂することもないです。
p値が大きく有意差がないときはどこが問題だったのかを考察する
なぜ有意差が出なくても論文化ができるのか。
これを理解するためには、P値が小さくなる要因は何か?ということを知る必要があります。
>>なぜサンプルサイズを決めるのか?P値が小さくなる要因は?
このとき、臨床的に意味のある結果が出た、ということではないのです。
というのも、P値が小さくなる要因は大きく分けて3つです。(T検定の場合)
- 2群間の平均値の差が大きい
- ばらつきが小さい
- 症例数が多い
実際に医学論文を書くのであれば、1番目の「2群間の平均値の差が大きい」という結果を期待して、そこに対して統計学的な有意差を出したいはずです。
しかし、実際には2群間の平均値の差がそれほど大きくなくても、症例数が多ければ有意差を出すことができます。
症例数が多くて有意差が出た場合であればクリニカルクエスチョンに対して本当にYesと胸を張って言えないですよね。
逆に有意差が出なかった時であっても、P値が小さくなる上記の3つを知っていれば、臨床的に有意義な平均値の差を得られることができなかったけど、症例数が少ないことで統計的な有意差に繋がらなかった、という考察ができるわけです。
以下の表のイメージはめちゃめちゃ大切なので、ぜひ理解してください。
私たちは「医学的に意味のある差」に対して「統計的な有意差」をつけることを期待して研究をします。(表の左上の結果)
しかし、結果として「医学的に意味のない差」に対して「統計的な有意差なし」という結果も、本当は重要な結果ではないでしょうか。(表の右下の結果)
ぜひ、「統計的な有意差」と「臨床的に意味のある差」は違うんだということを理解しましょう。
有意差がない時に有意な傾向があったといってもいい?
時々、有意差がない結果に対して「有意な傾向があった」というような記載を見ることがあると思います。
P値が0.05より大きいのだけど、0.07とか、もうちょっとで有意差が出そうな結果の時に記載されるような文言ですね。
有意差がないけど何かいいたい!という方が「有意な傾向がある」と記載しているのかなと。
ですが私の意見としては、有意な傾向があるとは記載しない方がいいと思っています。
なぜなら、統計的検定は「有意差あり / 有意差なし」という結論を得るための手法であり、結果はこの2択でしかあり得ないからです。
前述した通り、有意になるかどうかは次の3つが影響するんです(T検定の場合)。
- 2群間の平均値の差が大きい
- ばらつきが小さい
- 症例数が多い
つまり、平均値の差が臨床的に意味のある差が出ているのに、有意差が出ていないこともありえるということ。
その場合には症例数が不足している可能性が高く、検出力不足であることが考えられます。
そのため、考察で検出力不足であったことを記載するということです。
トップジャーナルの一つであるJAMAにも、このような記載があります。
「When such a study yields nonstatistically significant results (referred to as nonsignificant results in this article), an important question is whether the lack of statistical significance was likely due to a true absence of difference between the approaches or due to insufficient power.」
つまり有意差がなかった時
- 本当に差がなかったのか(臨床的に意味のある差が見出せなかったのか)
- 検出力不足か(臨床的に意味のある差が見出せたのに症例数不足だった)
どっちなのかを考えることが大事だということですね。
なので再度結論ですが、「有意な傾向があった」という記載はNGで、有意差がなかったら素直に有意差がないと書く。(P値を併記するのはOK)
その上で、本当に差がなかったのか、検出力不足なのかを考えて考察する。
これが大事になりますね。
医学論文の書き方とは?最初にやるべきことと絶対にやってはいけないこと
正しく医学論文を書くためには、最初が肝心です。
最初から間違った方向に行動を進めてしまうと、最終的にはカオスな状況になります。
そのため、医学論文を書くにあたって、最初にやるべきことと、絶対にやってはいけないことをまずはお伝えします。
医学論文を書くために最初にやるべきこと
まずは、医学論文を書くために最初にやるべきことです。
絶対にこれをやりましょう。
言い換えると、「この論文で明らかにしたいことはこれです」ということを明確化することです。
例えば。
- 男性と女性で肺がん発症率の違いを明らかにしたい
- 新薬と標準治療薬で、HbA1cの低下が違うのかを明らかにしたい。
みたいなことですね。
言い換えると「ゴールを明確化する」ということ。
突然ですが、ジグソーパズルをやるときに、絶対必要なものってわかりますか?
一番重要なものって実は”最終形の写真”です。
最終形の写真とは、言い換えればジグソーパズルの”ゴール”ですよね。
このゴールがなければ、パズルを闇雲にやっても完成させることはできません。
それと同じように、論文化するときにも”最終的に何を明らかにしたいのか”というゴールを決めておかなければなりません。
医学論文を書くために絶対にやってはいけないこと
では逆に、医学論文を書くために絶対にやってはいけないことは何でしょうか。
それは、多くの方がやりがちなことです。
これが一番やってはいけないことです。
闇雲にデータを解析して、P値が0.05を切るかどうかで一喜一憂し、良い結果になったものだけ切り出して論文化する。
繰り返しますが、これが一番やってはいけないこと。
先ほどのパズルの例だと、”最終形の写真を取り上げられたままパズルを始めること”と一緒です。
最終形の写真がなければ、効率的にパズルを組み立てられるとは思えませんし、やりなおしも頻繁に起こるでしょう。
それと一緒のことです。
医学論文を効率よく書いている人がやっていることは?
では、実際に医学論文を効率よく書いている人はどんなことをやっているのか?ということが知りたいですよね。
実際には、このような順番で動いています。
ちゃんとクリニカルクエスチョンを明確化していると、全く迷わないんです。
なぜなら、ゴールが明確だからです。
ゴールが明確であれば、あとはゴールまでのルートを探していけばいいだけ。
だから、効率よく論文を書くことができるんです。
医学論文がなかなか書けない人がやっていること
では逆に、医学論文をなかなか書けない人はどんなことをやっているのでしょうか?
それは、このような順番で動いていることが多いです。
最初にクリニカルクエスチョンを明確化させずに始めてしまうと、実験や解析と、論文執筆をなんども行き来しなければなりません。
そうなると、いつまでも論文化が進まないですし、最終的には面倒になってしまいます。
ゴールが明確じゃないので、当然の結果です。
そのため、本当に最初にクリニカルクエスチョンを明確化することは重要なのです。
有意差がないときの論文考察の書き方は?まとめ
医学論文を効率的に書くためには、絶対にクリニカルクエスチョンを最初に設定することが重要。
また、例え有意差が出なくても「クリニカルクエスチョンに対して答えが出ていて、しっかりと考察されている」のであれば、医学論文を出すことが可能。
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