臨床試験(治験)のデザインを考える

比較可能性とは?その統計的な比較結果は妥当なのか?

比較可能性とは?その統計的な比較結果は妥当なのか?

新薬の効果を証明する際の基本は比較です。

通常は、比較された結果のみが、信ぴょう性のある結果になります。

比較した結果、プラセボ(もしくは既存治療)よりも有効性が高く、安全性も担保されているということが分かって初めて、新薬がいい薬であることが分かります。

ただし、この「比較」にも注意しなければならない点があります。

それを理解していきましょう!

 

今回の記事では、「比較可能性」という用語の意味を理解するとともに、統計的な結果が信頼になる結果であるための条件を考えます。

また、比較可能性を担保するための方法も理解できます。

 

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比較可能性とはどんな意味?

比較可能性とはどんな意味?

 

比較可能性に関して、身近な例を交えて考えていきましょう。

例えば、牛丼を食べたいとします。

牛丼屋さんには、吉野家、松屋、すき家など、様々な牛丼屋さんがあります。

もしあなたが吉野家の定員だったら、自分のところの牛丼をどうアピールする必要があるでしょうか?

 

例1: 国産のお肉にこだわって、つゆにもこだわって、これだけ美味しい牛丼がXX円だよ!

 

と、吉野家の牛丼の特徴だけを述べるでしょうか?

これでもとても美味しそうなことは伝わります。

でも、それだけでは吉野家に行く理由にはなりませんよね。

だって、すき家も松屋も同じように、国産のお肉にこだわって、つゆにもこだわっている牛丼を提供しているとしたら、すき家や松屋に行ってもいいじゃないですか

 

じゃあどうするか。

比較して「違い」をアピールしたほうがいいと思いませんか?

 

例2: 国産のお肉にこだわって、つゆにもこだわって、これだけ美味しい牛丼がXX円だよ!しかも、松屋と同じ値段なのに、松屋はオーストラリア産のお肉だよ!

 

といったほうが、吉野家がお得であるということの信憑性が増しませんか

つまり、誰かと比較した結果として自分たちの方が優れている、ということをアピールする方が、周りからの信頼を得るための方法ですよね。

 

薬の効果のアピールの仕方も比較が必要

薬の効果のアピールの仕方も比較が必要

牛丼の例と同じように、薬の効果の示し方も比較した結果です

有効性に関しては、プラセボや既存の標準治療に対してどれだけ効果があったのか。

その効果はどれほどの臨床的な意義があるのか。

そして、統計学的に有意な違いがみられたのか。

そのような、「プラセボや既存の標準治療との違い」を示すことで、薬の効果がどれほどなのかを示すのです。

 

臨床試験では、どんなことを比較している?

では、臨床試験で比較しているものはなんでしょうか?

それは、有効性と安全性です。

疾患を治すために薬を開発するわけですから、有効性を証明する必要があることは当然です。

ですが重要なことは、同時に安全性もある程度示さなければなりません。

例えば、糖尿病を治せる薬だったとしても、がんを引き起こすような薬であれば、本当に使いたいと思えるような薬ではありません

そのため、製薬会社と当局は常に

「リスクベネフィットバランス」

を念頭に入れて開発します。

どれだけ高い有効性の効果があっても、リスクが大きければ薬としての価値は下がってしまいます。

 

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比較可能性という言葉

では一つ質問です。

比較した結果があれば信頼できるのであれば、「比較さえしていれば」その結果は必ず信憑性があるのでしょうか?

あなたはどう答えますか?

比較して、その結果が良いものであれば、何となくその結果には信憑性がありそうですよね。

 

でも、答えはNoです。

 

なぜでしょうか。

ここで新たに頭に入れていただきたい用語があります。

それは、「比較可能性」という用語です。

比較可能性は、次のような言葉で言い換えられます。

 

比較可能性を言い換えると

比較した集団は、ちゃんと似たような集団であるかどうか

 

ちゃんと牛丼屋さんで比較しているか?

例えば、先ほどの牛丼の例であれば、吉野家と松屋を比べたから、その結果に信憑性があったわけです

吉野家と松屋って、同じ牛丼屋さんですよね。

ですが、吉野家とマクドナルドを比べたらどうでしょうか?

 

 国産のお肉にこだわって、つゆにもこだわって、これだけ美味しい牛丼がXX円だよ!マクドナルドのハンバーガーはオーストラリア産のお肉を使ってるよ!

 

こんなこと言われても、「・・・・だから?」って感じじゃないですか。

これは極端な例ですけど、同様の比較をもしかしたらあなたもやっている可能性があります。

 

臨床試験でも、比較した集団が違えば信用できる結果ではない

今度は、臨床試験での例を考えましょう。

例えば抗がん剤の試験があった時に、新薬の方が有効性が高かったとします。

ですが、蓋を開けてみれば、新薬群ではステージIIの患者さんが8割だが、既存治療の群ではステージIIIの患者が8割を占めていたとしたら、新薬の方が有効性が高くなるのは目に見えています。

つまり比較する集団が違った場合、以下のような疑問が残ってしまうのです。

 

比較する集団が違うと、得られた効果が治療の違いによる効果なのか、それとも集団の違いによる効果なのか、区別がつかない

 

これが、私が先ほどNoと言った理由です。

そのため、試験開始時の被験者背景が群間でそろっていることが、比較可能性を担保することに重要なこととなります。

専門用語で言うと、「交絡バイアス」をなくす必要があるということ

 

比較可能性を担保する方法

比較可能性を担保する方法

比較可能性を担保するには、比較する相手同士がちゃんと同じ集団であることが重要でした。

では、どうすれば比較可能性を担保できるでしょうか?

 

その答えは、ランダム割付(ランダム化)です。

 

ランダム割付とは、新薬群にするのかプラセボ群にするのかを、ランダムに決めるということです。

比較可能性を担保する方法の一つであるランダム化

 

ランダム化をすることによって、集団として被験者背景が似た集団を作ることができます。

一般化可能性の記事で出てきたランダム抽出とはまた別の「ランダム」ですので、間違いのないように理解してくださね。

 

比較可能性に関してまとめ

比較可能性に関してまとめ

臨床試験成績は、まず比較された結果なのかを確認する必要がある。

また、比較する上では被験者背景が揃っているかどうかを確認する必要がある。

比較可能性を担保するには、ランダム化が重要になる。

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  1. […] なにかを明らかにしたいとき、基本的には比較をする必要があります。 […]

  2. […] その際に、その比較結果が本当に妥当なのか?という比較可能性を担保することはとても重要になります。 […]

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