この記事では「ITTの原則とは?FASやPPSとの違いを含めてわかりやすく解説!」ということでお伝えします。
医学論文を読んでいくと「ITT(Intent To Treat)」「FAS(Full Analysis Set)」「PPS(Per Protocol Set)」という単語が出てきます。
なんとなく聞いたことあるけど、その違いは完全に把握できていない。。。
という方も多いのではないでしょうか。
そのためこの記事では、「ITT(Intent To Treat)」「FAS(Full Analysis Set)」「PPS(Per Protocol Set)」の違いを解説するとともに、それぞれの集団がなぜ存在するのか?までわかりやすく解説しますね!
ITT・FAS・PPSの違いは?わかりやすく解説!
論文を読んでいるとよく出てくる「ITT(Intent To Treat)」「FAS(Full Analysis Set)」「PPS(Per Protocol Set)」という単語ですが、解析対象集団の違いを示しています。
どういった違いなのかをイメージ図にすると、以下の通り。
ITTはランダム化された全被験者を含む、一番大きい集団。
FASはITTから「一度も投与を受けていない」や「有効性のデータがひとつもない」などの被験者を除いた集団。
そしてPPSはさらに「プロトコル違反」などの被験者を除いた集団のことです。
ITTというのは「ランダム化された集団全て」という集団で、世界中でコンセンサスが取れている集団ですが、しかし、FASとPPSは各試験のプロトコルで定義する必要があります。
各試験で定義する必要があるということは、論文にもどんな人を除外したのか記載する必要ありということですね。
ITTの原則(ITT集団)とは?
「ITT」「FAS」「PPS」の3つの違いがなんとなく把握できたところで、ITTについてもう少し詳しく見ていきましょう。
ITTとはIntent To Treatの略。
日本語で言うと「治療しようとした」原則という意味になります。
つまり、「実際に治療したかどうか」ではなく、その被験者を「治療しようとしたかどうか」を優先する原則のことです。
例えば、プラセボにランダム化された被験者Aさんがいたとしましょう。
Aさんは何かの手違いで新薬を投与されたとします。
その場合、ITTの原則に従うと、Aさんはプラセボ群として扱うことになります。
なぜならプラセボ群にランダム化されたということは「プラセボ投与をしようとした」ということであり、実際に何を投与されたかよりも「どんな治療をしようとしたか」を何よりも優先する原則がITTの原則だからです。
もうひとつ例を見ていきます。
新薬群にランダム化された被験者Bさんがいたとしましょう。
Bさんは何かの理由で一度も投与されずに脱落されたとします。
その場合、ITTの原則に従うと、Bさんは新薬群として扱って解析対象になります。
なぜなら新薬群にランダム化されたということは「新薬を投与しようとした」ということであり実際に投与されたかどうかよりも「どんな治療をしようとしたか」を何よりも優先する原則がITTの原則だからです。
ITTの原則は「実臨床」を意識した原則
なぜ上記のような状況になるのでしょうか?
それは、ITTの原則は「実臨床」を意識した原則だからです。
残念ながら実臨床では投与間違いも少なからず起きます。
そんな状況であってもトータルとして新薬がプラセボよりも有益だったかどうかが重要です。
もし投与間違いが多い治療法があったとすると、、仮に効果があっても実臨床で使いにくいですよね。
また、実臨床では「治療しよう」と決まった段階から被験者の意識が変わることも多いです。
「治療しよう」と決まった時点で、生活習慣を変えるかもしれないですし、家族のサポートが手厚くなるかもしれない。
その結果、実際に治療しなくても改善することもあります。
なので、そういった実臨床の理想に近い解析対象集団を作るのがITTです。
FAS・PPSとは?FAS解析・PP解析をする意味
ITTは、実臨床の理想に近い解析対象集団でした。
確かに理想的なのはわかります。
でもそうは言っても、やっぱり臨床試験や臨床研究で理想を作り出すことは難しかったりします。
そこで登場するのが、FASです。
FAS(Full Analysis Set)とはどんな解析対象集団?
FASはITTより少し小さい集団でした。
ITTが実臨床に近い集団が理想といっても、実際にこの理想を達成するのは難しい。
さすがに一度でも投与されて、データがある被験者さんじゃないと解析集団に入れないようにしよう。
そういった集団がFASです。
どんな定義にするかは各試験で決める必要があります。
また、FASではなくmodified ITTという用語が使われている場合もありますね。
PPS(Per Protocol Set)とはどんな解析対象集団?
そしてPPSは、プロトコルを遵守した集団を指します。
例えばPPSでは、FASの中から投与間違いは解析から除きます。
なぜなら、投与間違いはプロトコルに違反しているから。
また、24週の試験で8週間後までの有効性データがなければ除く、ということもあります。
(24週や8週はあくまで例です。)
なぜなら、プロトコル上は24週まで完遂することが規定されています。
しかし、完遂した被験者だけだと流石に例数が少なくなるため、薬効が見える週までのデータは欲しい、という定義です。
上記の例を見ていくと、PPSとは「治療法の差を最大限見出すための集団」といったらイメージしやすいかもしれないですね。
そして重要なのは、PPSをどんな定義にするかは各試験で事前に決める必要がある、ということ。
事前に決めないと「有意差が出やすい集団」を作ることができてバイアスにつながるためです。
理想的には、ITT(もしくはFAS)の結果とPPSの結果に一貫性があるのが望ましいです。
そのため多くの論文では、ITT(もしくはFAS)の結果をメインにしてPPSの集団での結果を感度解析的に示していることが多いですね。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では「ITTの原則とは?FASやPPSとの違いを含めてわかりやすく解説!」ということでお伝えしました。
「ITT(Intent To Treat)」「FAS(Full Analysis Set)」「PPS(Per Protocol Set)」の違いや、それぞれの集団がなぜ存在するのか?まで理解できたのなら幸いです!
こちらの内容は動画でも解説していますので、あわせてご確認くださいませ。
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