医学論文の読み方書き方

感度解析(感度分析)とは医療統計でどんな役割や手法がある?

この記事では感度解析(感度分析)についてお伝えします。

臨床試験(臨床研究)において、感度解析(感度分析)を目にすることが多いかと思います。

「感度解析」と一言で言っても、試験が異なると実施されている感度解析も異なり、一体何を指して「感度解析」なのかと疑問に思う方もいますよね。

 

そこでこの記事では

  • なぜ感度解析をする必要があるのか
  • 感度解析に関する手法は何があるのか
  • 感度解析を論文に記載する方法は

ということをお伝えしていきます!

 

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感度解析(Sensitivity Analysis)とは医療統計でどんな目的で実施される?まずは結論

臨床試験(臨床研究)でよく目にする感度解析。

最初に感度解析の役割の結論をお伝えします。

 

 

解析に関する「仮定」をずらしたとしても、得られた結果による結論が変わらなければその試験のデータは「頑健性がある」と言えることができます。

 

なぜ感度解析をするのか?:解析には仮定が含まれている

通常、解析には「仮定」が含まれています。

しかし、解析をする上で考えている「仮定」が必ず正しいとは限らないので、 一つの解析だけだと「その検定だからその結果がでたんでしょ」というツッコミに反論できないのです。

 

仮定とは何かといえば、例えば「パラメトリック検定」であれば、データがある分布(例えば正規分布)に従っていると「仮定」して検定が実施されますね。

しかし仮に正規分布を仮定した検定を実施しても、実際のデータの分布は本当に正規分布に従っているかは蓋を開けてみないとわからないことも多い。

そのため、データの分布を仮定しない「ノンパラメトリック検定」を感度解析として用いれば「データが正規分布している」という「仮定」を除いた解析を実施することが可能になるわけです。

パラメトリック検定とノンパラメトリック検定では解析手法が異なるので、得られる結果(P値)は異なりますが、それでも同じ結論(有意/有意じゃない)が得られるのであればその結果には頑健性があることになります。

 

もう1つの例だと、欠測値の考慮の仕方

欠測値を補完する手法は、いくつか提案されています。

一時期流行った有名な手法としては、LOCF(Last Observation Carried Forward)という手法があります。

LOCFという欠測値の補完方法は「欠測値の直前の値を欠測値に補完する」という手法。

この補完方法にも「仮定」が含まれていますよね。

その仮定とは「欠測の前の最後に得られた値がずっと続く」という仮定。

この仮定はかなり強いものです。

そのため、欠測値に対しては別の方法(例えば多重補完法(Multiple Imputation))などを感度解析にして、仮定を変えた時にも同じような結論が出るのかを確認する必要があります。

 

主な感度解析の手法

感度解析を実施する目的が整理されたところで、主な感度解析の手法をお伝えしていきます。

感度解析に関しては「これさえやっておけば問題ない」という方法は存在しません。

研究者自身が「この解析はとても重要だけどこういった仮定が入っているから、仮定を変えた時にも同じ結論が出せるか?」ということを考えながら実施する必要があります。

 

ここでお伝えするのは3つです。

  1. 解析手法(検定)を変える
  2. 解析対象集団を変える
  3. 欠測値の補完方法を変える

具体的にみていきましょう。

 

感度解析の手法1:解析手法(検定)を変える

まずは、解析手法(検定)を変える、ということです。

前述の通り、「パラメトリック検定」であれば、データがある分布(例えば正規分布)に従っていると「仮定」して検定が実施されます。

そのため、データの分布を仮定しない「ノンパラメトリック検定」を感度解析として用いれば「データが正規分布している」という「仮定」を除いた解析を実施することが可能になりますね。

 

また、例えばメインとなる解析が多変量解析だった場合。

多変量解析では説明変数に何が入っているかで、解析結果は変わってきます。

そのため、多変量解析の説明変数を変えることも感度解析に当たります。

ある論文では、以下のような記載がありました。

多変量解析として「年齢」を含めた解析をメインとしているのですが、感度解析(Sensitivit Analysis)として「年齢」を除外した際に同じような結論(Similar findings)が得られるかどうかを実施しています。

 

感度解析の手法2:解析対象集団を変える

解析対象集団を変えることも立派な感度解析です。

有名な解析対象集団の考え方としてITT(Intent to Treat)とPPS(Per Protocol Set)があります。

たとえ解析手法が同じだったとしても、解析対象集団をITTからPPSに変えるだけでも感度解析となります。

例えば、ある論文では、以下のような記載がありました。

感度解析として、CVDイベントの既往がある女性を抜いた際の解析を実施しています。

ITTやPPSという大きな集団の変更ではなくとも、上記のように一部の症例を抜いた解析も立派な感度解析です。

 

感度解析の手法3:欠測値の補完方法を変える

感度解析の3つ目は、欠測値の補完方法を変えることです。

前述した通り、欠測値の補完はかなり強い「仮定」が入っていることが多い。

例えば、ある論文では、以下のような記載がありました。

欠測値の補完として「ベストケース」と「ワーストケース」のシナリオで解析する、というもの。

ベストケースシナリオとは「実薬群にとって一番有利なシナリオ」ということ。

逆にワーストケースシナリオとは「実薬群にとって一番不利なシナリオ」ということ。

ベストケースでもワーストケースでも同じ結論が得られれば、欠測値がどんな値だとしても試験の結論は頑健ですよね。

 

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感度解析に関して論文への書き方

では感度解析を実施したとして。

その結果を論文ではどう書けば良いのでしょうか。

感度解析によって得られる結果は2通りしかありません。

  • メインとなる解析と同じ結論が得られる解析結果
  • メインとなる解析と異なる結論が得られる解析結果

メインとなる解析と同じ結論が得られれば、「感度解析の結果はSimilarだった」だけでOKですね。

問題となるのはメインとなる解析と異なる結論が得られてしまった時です。

その場合には、なぜ異なる結論が得られたのか、考察をすることが重要です。

異なる結果が出たら問答無用でNG、ということではないので、ちゃんとした考察ができていればOKになります。

 

まとめ

この記事では感度解析についてお伝えしました。

感度解析とはメインとなる解析に対して「仮定」をずらしたときにどんな結果になるのか?を確認する解析のことでしたね。

感度解析の切り口としては3つ。

  1. 解析手法(検定)を変える
  2. 解析対象集団を変える
  3. 欠測値の補完方法を変える

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