正規分布について勉強していると、”歪度と尖度”という言葉に遭遇します。
普段は使わない言葉ですので、最近初めて知ったという方も多いはずです。
そんな歪度と尖度ですが、一体何のことで、どんな時に役立つものなのでしょうか?
本記事では歪度と尖度について、その意味と活用方法までご紹介していきたいと思います。
統計初心者でも大丈夫なように、なるべく分かりやすく説明していきますね!
歪度と尖度とは?
まずは、歪度と尖度とは何なのかをわかりやすく解説します!
歪度とは?
歪度とは、分布の左右の歪み具合(非対称度)のことです。
正規分布は左右対称な山の形をした分布のことです。
※正規分布について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。
でも実際の現場で集めたデータが完全に左右対称な分布になることはほとんどありません。
上のような歪んだデータになることがよくあります。
この分布の山が理想の正規分布からどれくらい左右にずれているかを表すのが歪度です。
- データが左に偏る→歪度が大きくなる(正の値になる)
- データが左右対称→歪度は0
- データが右に偏る→歪度が小さくなる(負の値になる)
先ほどのデータは左に偏っていましたので、歪度が正の値になります。
「難しくてまだよく分からない!」という方は、”データが左へどれくらい偏っているか?”を歪度は表していると覚えてしまいましょう。
最後に、一応歪度の計算式も載せておきます。(初心者の方は覚えなくても大丈夫です)
尖度とは?
尖度は文字通り、分布のとがり具合のことです。
とがり具合とは、どういう意味でしょうか。
実際に尖度が高い分布と尖度が低い分布を描いてみましょう。
このように分布が上に尖っているほど尖度は高い値になります。
反対に分布がなめらかで山が低いと尖度は低い値になります。
- データが上に尖る(ばらつきが小さい)→尖度が大きくなる(正の値になる)
- データが正規分布→歪度は0
- データが扁平(ばらつきが大きい)→尖度が小さくなる(負の値になる)
尖度も一応計算式を載せておきます。(初心者の方は覚えなくても大丈夫です)
歪度と尖度はどんな時に役立つの?
歪度と尖度が役に立つのは、”データの分布が正規分布からどれくらい逸脱しているのか調べたい時”です。
データによって、明らかに正規分布じゃなさそうだったり、正規分布っぽいけどそうじゃなさそうだったりと、ばらつきがありますよね。
そんな時に歪度と尖度があれば、そのデータの分布がどの程度正規分布に近いか、数値にすることができるというわけです。
データ解析する時に使うデータがどれくらい正規分布に近いかは、解析方法にかなり影響するため、歪度と尖度は非常に役立ちます。
またデータに外れ値がある場合、尖度が異常に高い値になります。
そのため尖度は外れ値の判定にも有効です。
歪度と尖度で正規分布を判別する目安や基準はある?
歪度と尖度とは何なのかわかったけど、この歪度と尖度は実際にどうやって使うのか?
それをお伝えしていきます。
そもそも歪度と尖度で正規分布を判定できるの?
歪度と尖度で正規分布を厳密に判定することはありませんが、判定の目安として使うことはあります。
歪度と尖度を使って正規性を確認する検定がないかと言われると、そんなことはありません。
あることにはあります。
でも、実践で正規分布を確かめる時にその検定を使うことはほとんどありません。
正規分布を正確に確かめる時は、シャピロウィルク検定という有名な検定があるからです。
しかもシャピロウィルク検定を含めた正規性の検定も、実際のデータ解析ではほぼ不要です。
ヒストグラムを確認したり、QQプロットを確認することで十分だからです。
では歪度と尖度は必要ないのでしょうか?
いえいえ、そんなことはありません。
検定というのは裏付けをとるには便利ですが、普段使いには面倒です。
「大量のデータがあってどれくらい正規分布に近いかとりあえず全部確認したいだけ」
というような場合はいちいち検定をかけずに、歪度と尖度を出してしまった方が圧倒的に楽に確認できます。
正規分布を判定する歪度と尖度の目安や基準は?
正規分布を判別する歪度と尖度の明確な目安や基準はありません。
「この値までは正規分布とみなせる!」というものはないということです。
あくまで0にどれだけ近いかという視点でどれだけ正規分布から離れているか分かるだけです。
試しに先ほどの左に偏ってヒストグラムの歪度と尖度をみてみましょう。
計算の結果「歪度=0.98,尖度=0.01」となりました。
確かに左に偏っているので歪度は正の値になっていますし、そんなに尖ってもいないので、妥当な歪度と尖度になっている印象です。
データの分布を確認したいときは、
- まず歪度と尖度をチェック(全データ)
- 次にヒストグラムを作る(できれば全データが望ましいが、データが多すぎる場合は絞ってもよい)
- 最後にシャピロウィルク検定で正規性を確認(どうしても裏付けをとりたいデータだけ)
という流れで確認していくといいですよ!
「ヒストグラムって何?」
「ヒストグラムってどうやって作るの?」
という方はヒストグラムに関してこちらの記事で解説していますので、よければご覧ください!
正規分布を確実に判断したいならシャピロウィルク検定
シャピロウィルク検定は、データが正規分布から逸脱していないか確認する検定です。
学会や論文でもよく使われている検定で、正規分布している、またはしていないという裏付けを取りたいときはシャピロウィルク検定を行うことをおすすめします。
しかし正規分布の裏付けに便利なシャピロウィルク検定ですが、実は一つ欠点があります。
残念ながら、シャピロウィルク検定はエクセルでは実行できないという点です。
そのためシャピロウィルク検定を行う場合は、EZRという無料の統計ソフトを使用することをおすすめします。
EZRは有名な統計ソフトであるRを初心者でも使えるように開発されたもので、EZRを使って解析している研究者も多いです。
無料とは思えないくらい使いやすくいろいろな検定ができますので、是非試してみて下さいね。
ちなみにシャピロウィルク検定の中身(数式)は非常に難しく、このブログで語る範疇を超えているので、割愛させて頂きます。
歪度と尖度をエクセルで計算できる?
歪度と尖度はエクセルで計算できる?
歪度と尖度はエクセルで計算できます。
しかも超簡単です!
実はエクセル関数の中に歪度と尖度を計算できる関数がちゃんと備わっているからです。
すごいですね、エクセル関数。
歪度をエクセルで計算する方法
歪度は以下の関数を使うことで計算できます。
=SKEW()
かっこの中は歪度を確かめたいデータを選択すればOKです。
これだけで歪度の計算ができます。
尖度をエクセルで計算する方法
尖度は以下の関数を使うことで計算できます。
=KURT()
これもかっこの中は歪度を確かめたいデータを選択すればOKです。
こちらも簡単でしたね。
平均値などを算出する時に一緒に歪度と尖度も算出しておくと楽ですよ!
まとめ
最後におさらいをしましょう。
- 歪度は分布の左右の歪み具合(非対称度)を表す
- 尖度は分布の上方向への尖り具合を表す
- 歪度と尖度は分布が正規分布からどれくらい逸脱しているか判断する目安になる
- 歪度はSKEW関数、尖度はKURT関数を使うことでエクセルで計算できる
いかがでしたでしょうか?
歪度と尖度は論文にはあまり登場しませんが、データ解析の場面ではちょくちょく使われます。
データが正規分布しているかどうかの確認は検定をかけるなら必須項目ですので、必要な方は必ず確認する癖をつけておきましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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