この記事では「コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)とは?どんなデータに使えて論文での記載例は?」ということでお伝えいたします。
T検定やカイ二乗検定なんかと比べたら、かなりマイナーなコクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)。
しかし、医学論文ではたまに使われているため、出てきた時に「コクランマンテルヘンツェル検定って何なの・・・。」とならないようにしましょう!
- コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)とはどんなデータに使える検定か?
- コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)層別解析の一つ!
- コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)の論文での記載例
をお伝えいたします。
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)とはどんなデータに使える?
まずは、コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)がどんなデータに対して使う検定なのかを整理しましょう。
結論からいうと、コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)は2×2分割表を作成するようなカテゴリカルデータ(質的データ)に対する解析です。
2×2分割表で使われる検定としては、有名なものが2つあるのはご存知ですか?
そう、「カイ二乗検定」と「フィッシャーの正確確率検定」の2つです。
すでに2つの検定があるのに、コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)は何が違うのでしょうか?
その違いは「層別因子を考慮した解析(層別解析)」ができる点。
異なる層(サブグループ)間でのデータの関連性を考慮しながら、全体としての関連性を評価する手法です。
それ以外には、「カイ二乗検定」と「フィッシャーの正確確率検定」の2つと違いがほとんどありません。
つまり、「層別因子を考慮する」という点だけが異なりますので、検定を使う目的は上記二つの検定と同じ。
得られる結論も同じです。
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)は層別にオッズ比を計算して統合する層別解析の一つ
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)が「2×2分割表で使われる検定」であり「層別因子を考慮することができる検定」であることがわかりましたね。
ここで層別因子をちょっとだけ復習しておきましょう。
復習:層別解析を理解するのに必要な「層別因子」とは?
層別因子についての詳細は「層別解析とサブグループ解析の違いは?統合方法や結果の見方もわかりやすく!」の記事をご参照ください。
層別因子はICH E9に定義が書いてあって、以下がその定義です。
つまりここから分かるのが
- 層別因子は割付(ランダム化)の際に考慮すべき因子のこと
- 層別因子は疾患の予後に影響があると考えられる因子のこと
ということですね。
層別因子を考慮したランダム化である「層別ランダム化」というのがあります。
層別ランダム化とは、例えば、性別(男性と女性)が疾患の予後に影響がありそうなので層別因子として考えたい、とします。
この時に、被験者が男性か女性かに応じて、男性ごとにランダム化・女性ごとにランダム化、という作業をするのです。
層別因子のカテゴリごとにランダム化することによって、プラセボ群で実薬群で、男性と女性のバランスが取れることが期待できるのです。
そして、層別因子を考慮したランダム化を実施した後は、解析段階でもその層別因子を考慮することが推奨されています。
「層別因子を考慮した解析」の一つが層別解析ですね。
そして、層別解析の一つがコクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)なのです。
層別解析の手順とコクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)の解析手順
層別解析は以下の2つの手順で実施します。
- 層別因子のカテゴリごとに解析する(サブグループ解析と同じ)
- カテゴリごとの解析結果を統合する
最後に「解析結果を統合する」というのが重要で、つまり結果としてP値は1つだけ出力される、ということです。
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)の解析手順も層別解析と全く同じです。
- 層別因子のカテゴリごとに解析する(層別にオッズ比を計算)
- 統合した解析結果が出力される
つまり、コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)は層別解析の一つ、ということです。
統合した解析結果に関しては、SPSSでは「共通オッズ比の推定値」として出力されるようです。
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)の限界
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)は、多くの研究分野で有効な統計手法として用いられますが、その適用にあたってはいくつかの限界と注意点があります。
特に、CMH検定は層別化されたデータにのみ適用可能という点。
層別化が不適切である場合や、データが十分に層別化されていない場合、検定の結果は信頼性を欠くことになります。
層別化は1つか2つの因子で実施されることが多く、逆に言えば「1つか2つの因子しか考慮できない」とも言えます。
前向きのランダマイズされた研究であれば1つか2つの因子しか考慮できなくてもいいかもしれません。
しかし後ろ向きのランダマイズされていない研究であれば、より多くの因子を考慮したい場合もあります。
その場合には、CMH検定よりも多変量解析の一つである、ロジスティック回帰分析の方が使い勝手がいいと思います。
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)の論文での記載例
最後に、コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)が使われている論文がありましたので、紹介しておきます。
NEJMの「Treatment of Uterine Fibroid Symptoms with Relugolix Combination Therapy」という論文でコクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)が使われていました。
Methodを見てみると、以下の通り。
Cochran-Mantel-Haenszel testが使われた、という記載がありますね。
そしてコクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)は層別解析の一種であるため、どの層別因子(Stratification factor)を考慮したかが書かれてあります。
みなさんがコクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)を使った論文を作成するときも、層別因子の記載は必須と思っていただければと思います。
コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)についてまとめ
いかがでしたか?
この記事では「コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)とは?どんなデータに使えて論文での記載例は?」ということでお伝えいたしました。
- コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)とはどんなデータに使える検定か?
- コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)層別解析の一つ!
- コクランマンテルヘンツェル検定(CMH検定)の論文での記載例
といったことが整理できたのなら幸いです!
こちらの記事は、動画でもお伝えしているのでぜひ合わせてご覧くださいませ。
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